非認知能力とは文部科学省が重視する学びの力を徹底解説
「うちの子、テストの点数は悪くないのに、なぜか途中で投げ出してしまう」「集団の中でうまくやっていけるか心配」——こうした悩みを持つ保護者の方は、決して少なくありません。
実は、こうした「テストでは測れない力」こそが、文部科学省が今もっとも重視している**非認知能力**です。
2020年度に全面実施された新学習指導要領では、知識や技能だけでなく、「学びに向かう力・人間性等」が三本柱のひとつとして明確に位置づけられました。これは、国として非認知能力の育成を教育の中心に据えたことを意味しています。
個人的な経験では、非認知能力という言葉を知っていても「具体的に何を指すのか」「文部科学省はどう定義しているのか」を正確に理解している方は意外と少ないように感じています。この記事では、文部科学省の方針に基づきながら、非認知能力の本質をわかりやすくお伝えします。
この記事で学べること
- 文部科学省が定義する非認知能力の3つの柱と具体的な中身
- 新学習指導要領で非認知能力がどの位置に組み込まれているか
- 認知能力との違いと両者が補い合う関係性
- 家庭で今日から実践できる非認知能力の育て方
- 非認知能力が高い子どもに見られる共通の特徴
文部科学省が定義する非認知能力とは
非認知能力とは、テストの点数やIQなど数値化できる「認知能力」では捉えきれない、人間としての総合的な力のことです。
具体的には、意欲、協調性、忍耐力、計画性、自制心、創造性、コミュニケーション力といった幅広いスキルを指します。
文部科学省はこの非認知能力を、新学習指導要領の中で「学びに向かう力・人間性等」という言葉で表現しています。これは単なる性格の問題ではなく、教育によって育成できる能力として国が公式に認めたものです。
ここで重要なのは、非認知能力が「あれば良い付加価値」ではないという点です。文部科学省は、知識・技能、思考力・判断力・表現力と並ぶ三本柱のひとつとして、同等の重要性を持たせています。
文部科学省が示す3つの核心要素
文部科学省の方針を整理すると、非認知能力は大きく3つの要素で構成されています。
目標への粘り強さ
自分なりの目標を設定し、困難に直面しても諦めずに取り組み続ける力。レジリエンス(回復力)とも深く関わります。
柔軟な対応力
状況の変化に応じて方法を調整し、新しいアプローチを試みる適応力。計画を修正する柔軟さも含まれます。
協働する力
他者と協力しながら共通の目標に向かって取り組む力。コミュニケーション力や共感性が土台となります。
この3つは独立しているわけではありません。たとえば、グループで何かを成し遂げるとき(協働する力)には、うまくいかない場面で粘る力(目標への粘り強さ)や、他の人の意見を取り入れて方針を変える力(柔軟な対応力)が同時に求められます。
新学習指導要領における非認知能力の位置づけ

2020年度から全面実施された新学習指導要領では、育成すべき資質・能力が「三つの柱」として整理されました。
新学習指導要領の三つの柱
「学びに向かう力・人間性等」が非認知能力に直接対応する柱です。ここには、学習意欲、自己調整力、思いやり、多様性の尊重、感性、優しさなどが含まれています。
注目すべきは、「思考力・判断力・表現力等」の柱にも非認知能力の要素が含まれている点です。たとえば、自分の考えを他者にわかりやすく伝える「表現力」は、コミュニケーション能力という非認知能力と切り離せません。
つまり、文部科学省の学習指導要領では、三つの柱のうち実質的に二つが非認知能力と深く関わっているのです。
なぜ文部科学省は非認知能力を重視するようになったのか
この背景には、国際的な教育研究の蓄積があります。
ノーベル経済学賞を受賞したジェームズ・ヘックマン教授の研究は、幼児期の非認知能力への投資が、将来の学力・収入・社会的成功に大きな影響を与えることを示しました。OECDもまた、21世紀型スキルとして社会情動的スキル(非認知能力の国際的な呼称)の重要性を提唱しています。
日本国内でも、知識偏重型の教育への反省から、「生きる力」の育成が長年議論されてきました。非認知能力の重視は、この流れの延長線上にあります。
非認知能力に含まれる具体的なスキル一覧

「非認知能力」という言葉は抽象的に聞こえるかもしれません。しかし、その中身を分解すると、私たちが日常的に目にする具体的な行動や態度に結びついています。
自分に関わる力(自己管理系)
自制心——目の前の誘惑を我慢して、やるべきことに集中する力です。宿題の前にゲームを我慢できるかどうか、まさにこの力が問われます。
忍耐力——すぐに結果が出なくても、粘り強く続けられる力。やり抜く力(グリット)とも呼ばれ、近年特に注目されています。
感情のコントロール——怒りや悲しみに振り回されず、自分の気持ちを適切に表現できる力です。
自信・自己肯定感——「自分にはできる」という健全な自己認識。挑戦する意欲の土台になります。
他者に関わる力(社会性系)
協調性——他の人と力を合わせて物事を進める力です。意見が違うときに折り合いをつける能力も含まれます。
コミュニケーション力——自分の考えを伝え、相手の話を聴く双方向の力。EQ(心の知能指数)とも深く関わります。
共感性——他者の気持ちを想像し、寄り添える力。思いやりの根幹にあるものです。
学びに関わる力(学習姿勢系)
好奇心・探究心——「なぜ?」「もっと知りたい」という内発的な動機。探究学習の原動力となります。
創造性——既存の枠にとらわれず、新しいアイデアを生み出す力です。
主体性・自律的な学び——言われなくても自分から学びに向かう姿勢。文部科学省が「主体的・対話的で深い学び」として推進している要素です。
認知能力と非認知能力の関係

「認知能力と非認知能力は対立するもの」と誤解されることがありますが、実際にはそうではありません。
両者は車の両輪のような関係で、互いに支え合って初めて本来の力を発揮します。
認知能力
- テストで測定可能
- IQ・学力・記憶力
- 論理的思考・計算力
- 知識の蓄積と活用
非認知能力
- 数値化が難しい
- 意欲・忍耐力・協調性
- 感情調整・共感性
- 自己肯定感・創造性
たとえば、算数の難しい問題を解くには計算力(認知能力)が必要ですが、「わからなくても粘り強く考え続ける力」(非認知能力)がなければ途中で諦めてしまいます。逆に、やる気だけあっても基礎的な知識がなければ問題は解けません。
認知能力と非認知能力の違いをより深く理解することで、お子さまの教育をバランスよく考えることができます。
家庭でできる非認知能力の育て方
非認知能力は学校だけで育つものではありません。むしろ、日常の家庭生活の中にこそ、非認知能力を伸ばすチャンスが数多く存在します。
プロセスを認める声かけを意識する
「100点すごいね」ではなく、「最後まで頑張ったね」「難しい問題にも挑戦したんだね」と、結果ではなく過程を褒めることが大切です。
これは単なる育児テクニックではありません。結果重視の声かけは「失敗を恐れる子」を育て、プロセス重視の声かけは「挑戦を楽しめる子」を育てるという違いがあります。
失敗を安全に経験させる
非認知能力の中核にある「レジリエンス(回復力)」は、失敗の経験なしには育ちません。
親としてはつい先回りして失敗を防ぎたくなりますが、小さな失敗を安全な環境で経験させることが、長い目で見ると子どもの力になります。失敗したとき、「大丈夫、次はどうすればいいか一緒に考えよう」という姿勢が重要です。
遊びの中で自然に育てる
ごっこ遊びは想像力と共感性を、ボードゲームはルールの理解と感情のコントロールを、外遊びは体力とともに挑戦心を育みます。
非認知能力を鍛える遊びは特別なものである必要はなく、日常の遊びの中に豊かな学びの機会が潜んでいます。
日常生活の中に「選択」と「責任」を取り入れる
「今日の服はどれにする?」「おやつはリンゴとバナナ、どっちがいい?」
小さな選択を日常的に任せることで、子どもは自分で考え、決断し、その結果を受け入れる経験を積みます。これは主体性と自己決定力の基盤になります。
お手伝いも効果的です。食器を運ぶ、洗濯物をたたむといった役割を持つことで、責任感と家族への貢献意識が育まれます。
非認知能力が高い子どもに見られる特徴
非認知能力が高い子どもには、いくつかの共通した行動パターンが見られます。
非認知能力が高い子どもの行動チェックリスト
すべてに当てはまる必要はありません。大切なのは、こうした力が少しずつ育っているかどうかを長い目で見守ることです。非認知能力が高い人の特徴は、子ども時代だけでなく大人になってからも活きてきます。
文部科学省の方針を踏まえた今後の教育の方向性
文部科学省が非認知能力を重視する姿勢は、今後さらに強まっていくと考えられます。
「主体的・対話的で深い学び」(アクティブ・ラーニング)の推進は、まさに非認知能力の育成を授業の中で実現するための方法論です。一方的に知識を伝える授業から、子どもたちが自ら考え、話し合い、学びを深める授業へ——この転換の根底にあるのが非認知能力の重視です。
今後の学校教育では、通知表の評価にも非認知能力的な要素がさらに反映されていく可能性があります。「主体的に学習に取り組む態度」という評価観点は、すでにその方向性を示しています。
保護者としてできることは、学校の方針を理解した上で、家庭でも非認知能力を意識した関わりを続けることです。学校と家庭の両方で一貫した育成がなされたとき、子どもの成長はもっとも加速します。
よくある質問
非認知能力は何歳から育てるのが効果的ですか
非認知能力の土台は乳幼児期から形成され始めます。特に3〜6歳の幼児期は、自制心や協調性の基盤が作られる重要な時期です。ただし、非認知能力は生涯を通じて発達し続けるため、「もう遅い」ということはありません。早期教育の観点からも、幼児期の関わりが重要視されています。
非認知能力と学力(認知能力)はどちらが大切ですか
どちらか一方ではなく、両方が大切です。文部科学省も三つの柱を同等に扱っています。非認知能力が高いと学習への意欲が持続しやすくなり、結果的に学力向上にもつながるという相乗効果が期待できます。認知能力と非認知能力はセットで考えるのが理想的です。
非認知能力を数値で測ることはできますか
厳密な数値化は難しいですが、行動観察やアンケート形式のチェックリストを活用することで、おおまかな傾向を把握することは可能です。文部科学省も、通知表の「主体的に学習に取り組む態度」の評価を通じて、非認知能力的な要素を間接的に評価する仕組みを導入しています。
習い事で非認知能力を伸ばすことはできますか
はい、できます。チームスポーツは協調性と忍耐力を、音楽は集中力と自己表現力を、アートは創造性と自己肯定感を育みやすいとされています。ただし、子ども自身が楽しんで取り組めることが前提です。嫌々やらされる習い事では、非認知能力の育成効果は限定的になります。
文部科学省の方針は今後変わる可能性がありますか
非認知能力を重視する方向性は、国際的な教育トレンドとも一致しており、大きく後退することは考えにくいです。むしろ、STEAM教育やプログラミング教育の導入にも見られるように、非認知能力を活かす場面はさらに広がっていくと考えられます。次期学習指導要領の改訂でも、この方向性は維持・強化されるでしょう。